レンタル彼氏 Ⅰ【完結】
それから、もう伊織の話題は出さなかった。

暫く、世間話をした後(ほとんど私が話してたけど)千里と別れた私は一人考えていた。


…あの、伊織が泣いた。

しかも、女を思って。



その子はきっと、伊織の中で相当大きい存在なのだろう。
大切に思ってるのかもしれない。

彼女じゃないなら、片思い?

なんて贅沢なの?
その子。


そう、思うとふふっと笑う。




なんか、自分が伊織の母親になった気分だ。
伊織が心配で堪らない。

夕日で赤く染まる空を見ながら。


また、伊織のことを思った。


誕生日。
最高にしてやろう。


そう、思った私はすぐにホテルに電話をかけた。


予約の日?
もちろん、9月19日。

伊織がこの世に生まれた大切な日。



いくらでも注ぎ込んでやるから。

伊織が満足するなら。
伊織が喜ぶなら。


私、何でもするよ。

恋愛感情じゃない、この気持ちはなんなんだろう。
母性にも似た、この感情。


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