レンタル彼氏 Ⅰ【完結】
「あっ、佐々木君じゃ~ん」
事務所から出て、今度は千里さんに資料を渡そうとしたとこに声をかけられる。
この声は。
「……美佳さん」
「わっ。何、それ資料ー?見せて見せて」
「だっ、ダメです。大事な個人情報です」
「えーーーケチー。佐々木君のケチー」
からからっと明るく、その場を照らし出すように笑う美佳さん。
密かに心惹かれていた。
でも、美佳さんは社長のお気に入り。
だから、届かない想い。
「あ、伊織いるー?」
「伊織さんならさっき部屋に…」
「まじ?じゃあ、部屋に行ってくる」
頑張ってーなんて手を振りながら伊織さんの部屋に入っていく美佳さん。
その姿を僕は黙って見つめる事しか出来ない。
………だから、嫌いだ。
それからしばらくして、伊織さんにいつもの様に仕事の話をしようと、部屋に入った時だった。