レンタル彼氏 Ⅰ【完結】
「失礼します」
事務的な言い方で入る僕。
入ってすぐに違和感を感じた。
「………伊織…さん?」
あれ、いない?
いつも大体ソファに座ってるか、寝室にいるかなのに。
「伊織さん、次の仕事の……」
ぐるっと部屋を見回した時だった。
「い、伊織っさん?!」
扉のすぐ横に放心したまま座っている。
動きもしない。
……え?
何が起こったの?
顔色悪いし、クマも酷い。
細い体が更に痛々しい。
「大丈夫ですか!?」
焦って伊織さんに話しかけるけど、伊織さんは虚ろだ。
ええっと、救急車か?
「きゅ、救急車呼びますね!」
えっと、救急車って11なんだっけ、あれ?119?
動揺して震えている僕のズボンを引っ張られる。
「…佐々木、いい」
「え?」
下を見ると、伊織さんが僕のズボンを引っ張っていた。