レンタル彼氏 Ⅰ【完結】
ふっと真顔になった伊織は血が滲む拳に見向きもせず

「喋りすぎた、忘れて」

それだけ言って、立ち去ろうとした。

私はそれを慌てて引き止める。



こんな危ない人、きっと関わったらいけない。
記事はもう諦めて、メイちゃんのこと書いたらいいじゃないか。


そう、頭で危険を示すサイレンが鳴り響いているのに。




私はこのままの彼を見過ごすことが出来なかった。




訝しげな顔で、明らかに私に嫌悪感を露呈する伊織にまた怯みそうになった。




「……一生かかって分割じゃ…ダメ?」


「…………………は?」




私は何て馬鹿な呼び止め方をしたのだろうか。
もっと他に言い方あっただろうに。


自分の引き出しの少なさに嫌気が差した。
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