レンタル彼氏 Ⅰ【完結】
その翌日。
僕が伊織さんの部屋へ資料を持っていこうと出た時だった。
ちょうど、伊織さんが廊下を歩いていた。
コンビニの袋を持っているから、何か買って来たのだろうか。
…昨日あれだけ僕が買ったのに。
そう思うけど、文句も言えず僕は伊織さんに声をかけた。
「伊織さん」
ぴくっと肩を揺らした伊織さんがゆらっとこっちを見る。
その姿が昨日の虚ろな時よりも不気味で思わずぞくってした。
「何」
低い声を出した伊織さんは何か、高圧的だ。
「いや、昨日の資料…」
「ああ。そか」
こっちに体を全部向けて、伊織さんは早く寄越せと言わんばかりに手を出す。
それに僕は慌てて資料を差し出した。
その資料を渡すと、
「では、また」
と言ってその場を去ろうと踵を返した。
だけど。
「あーー佐々木」
「…はい」
そうやって、僕を呼びとめた伊織さん。
くるっと振り向くと、顔だけこっちを向かせた伊織さんはぼそっと。
「……ありがとな」
一言だけ言うと、僕の言葉を待たずに部屋へと入って行った。
僕が伊織さんの部屋へ資料を持っていこうと出た時だった。
ちょうど、伊織さんが廊下を歩いていた。
コンビニの袋を持っているから、何か買って来たのだろうか。
…昨日あれだけ僕が買ったのに。
そう思うけど、文句も言えず僕は伊織さんに声をかけた。
「伊織さん」
ぴくっと肩を揺らした伊織さんがゆらっとこっちを見る。
その姿が昨日の虚ろな時よりも不気味で思わずぞくってした。
「何」
低い声を出した伊織さんは何か、高圧的だ。
「いや、昨日の資料…」
「ああ。そか」
こっちに体を全部向けて、伊織さんは早く寄越せと言わんばかりに手を出す。
それに僕は慌てて資料を差し出した。
その資料を渡すと、
「では、また」
と言ってその場を去ろうと踵を返した。
だけど。
「あーー佐々木」
「…はい」
そうやって、僕を呼びとめた伊織さん。
くるっと振り向くと、顔だけこっちを向かせた伊織さんはぼそっと。
「……ありがとな」
一言だけ言うと、僕の言葉を待たずに部屋へと入って行った。