レンタル彼氏 Ⅰ【完結】
「じゃあ、えー…………と、…………名前。名前聞いてなかった」


「私の?」


私がそう言うと、私を指差して伊織がこくりと頷く。


「私は泉」


「泉ね、泉の理想の彼氏ってどんなの?」


「…理想……」


理想かあ。
なんだろうか。



「話が面白くて、優しい人かなあ」


「ああ、王道ね」


その言い方に思わずムッとする。


「ああ、そんな膨れないで。
優しい、面白い、落ち着く。
女は大体こればっかだからね」


「……」



そこら辺の普通の女みたいな言い方に一々カチンとしてしまう。
多分、伊織はわざとそう言ってるんだ。


何が悪い。
面白くて、優しいなら最高じゃないか!



「甘いな。
それだけじゃずっと付き合えない」


「優しくて面白かったら、悪い人じゃないもん!」


必死に抗ってみるが、ぴしゃりと伊織が言う。


「優しくて面白くても、浮気したら?借金あったら?殴ったら?」

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