レンタル彼氏 Ⅰ【完結】
「いや、だから」


「伊織のことあれこれ聞こうとしたけど、私のこと教えなかったらフェアじゃない。
恋人って対等なものでしょ?」


何回も見た伊織の面食らった顔。
また、その顔をしては伊織は顔を片手で覆った。
口からは笑みがこぼれている。



「………本当に変わった奴」


「ふふ、よく言われる」


「………何から教えてくれんの?」


「うーん、どーしよ。何知りたい?」


「は?俺任せ?」


「うん」


「ぶはっ!何だ、お前」


「えっ?」


「どこまで変わってんだよ!」




………これは素の伊織だ。



「…伊織、笑った」


「え?」


「“伊織”が笑った」


「…!」


素の伊織が笑ってくれた。

それが何よりも嬉しく思えたんだ。


だって、やっと一歩伊織に近づけたような気がして。
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