レンタル彼氏 Ⅰ【完結】
「……ほんとに変な奴」


ぼそっと呟く伊織の顔は嬉しそうで、悲しそうで。
戸惑うような瞳だった。


「じゃあ、自己紹介!」


「…は?」


「浜田泉、16歳、A型、誕生日は6月6日、え~っと」


ポカンとしてる伊織を見ながら私は続ける。


「好きな食べ物は煮物、嫌いな食べ物はバナナ、好きな色は青、えとー」


「ちょ、タンマ」


「え?」


永遠に続きそうだと思った伊織は、慌てて私を止めた。


「…まさか、ずっとそんな調子?」


「うん!」


ニコニコと笑う私に溜め息をつきながら

「いや、いきなりそんな言われたって覚えらんないわ」

至極ごもっともな意見を述べた。



「ああ、そうか」


「付き合った人数は?」


「え、二人」


「お、二人もいんの?生意気」


片方の口の端だけ上げて伊織が笑う。


「キスは?」


「…」


「ない…のね」


「わ、悪かったわね!」


「いや、いーよ」



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