レンタル彼氏 Ⅰ【完結】
“伊織が私のこと好きじゃないじゃん”
そう、言おうとしてた自分に驚いた。
私、何てこと言おうとしてたの?
伊織はレンタル彼氏だ。
本当の彼氏ではない。
「何よりどーしたの?」
少し刺々しい伊織の声。
「…付き合ってまだ一日しか経ってない」
「ああ、そんなこと気にしてたの」
「そ、そんなことって」
「…さっきホテルの話してたのに?」
ニヤリと笑った伊織にゾクリとした。
伊織は……怖い。
何者かわからなくて、怖い。
「あ、電話だ」
何も言い返せない私を無視したまま、伊織は電話に出た。
「もしもーし」
その声は、さっきの伊織からは想像出来ないほど甘い。
もしかしたら“彼女”かもしれない。
「うん、そうかー。わかったあ、どこ行けばいい?」