レンタル彼氏 Ⅰ【完結】
自分の教室に戻ると、勢いよく扉を開ける。
一気に注がれる視線。



だけど、そんなの今はどうでもいい。


「お、浜田、もう大丈夫か?」


担任の鈴木がそう言うのを無視して、自分の机からカバンを取った。


そして

「具合、悪すぎなので早退します!」

それだけ宣言して私は教室をまた飛び出した。




「…浜田、元気そうだぞ」


呟く鈴木の声も。
びっくりしてる和の顔も。
複雑な顔してる順二の顔も。


全て目に入らなかった。




頭には伊織しかいなかったから。


………伊織に会いたい。





きっと、私は。




伊織が好きなんだ。



性懲りもなく、あんな人気者を好きになったんだ。



自覚した私は。


もう、開き直るしかないと思った。





そんな私はレンタル彼氏の注意事項なんか頭になくって。
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