黄緑絵の具
足りない色は、

『周平! 画材屋に行くのか?』

同級生のアキラが走ってきた。


『うん。水彩用の絵の具をいくつか買い足しに行くんだ』


今月中に課題を仕上げなければならないのに、色が足りなくなったのだ。


『今日はいつもと違う店に行ってみないか?』

僕はいつも同じ画材屋に通っている。

なぜ急にそんなことを言い出すのだろう。


『俺、今からデートなんだよ。しかもレイカと!
だから注文してる画材を取ってきてもらいたいんだ』


レイカちゃんはうちの学部でも1、2を争う美人さん。

レイカちゃんを必死に口説くアキラを何度も見かけた。


『いいよ。場所教えて。』


情熱的なアキラを羨ましい、と思いながら手書きの地図を受け取った。



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