黄緑絵の具
足りない色は、
『周平! 画材屋に行くのか?』
同級生のアキラが走ってきた。
『うん。水彩用の絵の具をいくつか買い足しに行くんだ』
今月中に課題を仕上げなければならないのに、色が足りなくなったのだ。
『今日はいつもと違う店に行ってみないか?』
僕はいつも同じ画材屋に通っている。
なぜ急にそんなことを言い出すのだろう。
『俺、今からデートなんだよ。しかもレイカと!
だから注文してる画材を取ってきてもらいたいんだ』
レイカちゃんはうちの学部でも1、2を争う美人さん。
レイカちゃんを必死に口説くアキラを何度も見かけた。
『いいよ。場所教えて。』
情熱的なアキラを羨ましい、と思いながら手書きの地図を受け取った。
< 1 / 103 >