黄緑絵の具
『きっ、嫌いかなんて分かりませんよ!』
女と言われた瞬間、家を飛び出した時のスグリの顔が頭に浮かんだ。
あの上目遣いの表情を思い出すと、なぜか胸がドキドキする。
きっと今、僕の顔は真っ赤になっているだろう。
『もしかして女を知らないのかい?』
スミレさんは僕の反応を見て、ゲラゲラと大笑いだ。
『芸術と感情は深く繋がってる。
その黄緑の女、あんたには必要そうだけどね』
『悔しいが、我も同感じゃ』
気が付くとベリアルが店の入口に立っていた。
『ベリアルさん! なんでここに……』
『お前を探してここに辿り着いた。
まさかスミレと知り合いだとは思わんかったぞ』
スミレさんとベリアルは知り合いなのか?
ベリアルが店の中に入ってくると、スミレさんは頭を下げた。
『お久しぶりです、ベリアル様。
フォルネウス様はお元気ですか?』
『ヤツは相変わらずじゃ。
スミレもかなり老けたのぅ』
しばらく僕は放置され、二人は世間話をし続けていた。