黄緑絵の具


ふと気付く。

さっきスミレさんはベリアルのことを“様”付けで呼んだような気がする。

フォルネウスとベリアルは仲良し(らしい)で、桑原氏とフォルネウスが恋仲だった。
スミレさんと桑原氏は夫婦で、ベリアルとも知り合いで……


『お前は早く家に帰れ。
スグリが泣き止まぬではないか』

ベリアルの言葉で、考えが止まる。


スグリが泣いている……

泣き顔を想像したら、また胸がキュッとなった。

なぜだろう。
切ないような苦しいような形容しがたい気持ちになる。

『僕の家だし、言われなくても帰ります』

ベリアルとスミレさんは二人ともニヤニヤしていて、なんだか腹立たしい。


『お茶、ごちそうさまでした』


店を出るとスミレさんが追いかけてきた。

そしてメモ紙を手渡される。

『なにかあったら相談しな』

紙には電話番号がかいてあった。


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