黄緑絵の具
戸惑いと温かさ。
帰りたくないのか、帰りたいのか。
複雑な気持ちでアパートの前に立っていた。
30分位はこうしている気がする。
キュルルっとお腹の虫が鳴いた。
そういえば、朝から何も食べていない。
“財布を取りに行くだけだ”
そう自分に言い聞かせ、自分の部屋のドアを開けた。
『シュウ!!』
家に入るとスグリが走り寄ってきた。
目が充血し、まぶたも腫れている。
『泣いていたの?』
『……少しだけ。』
いやいや。
かなり泣かないとそんなに目は腫れないと思うよ。
心の中で思ったけれど、口には出さなかった。
『あの……あたし……』
『ん?』
スグリを見ると、俯いていて顔が見えない。何か言いたそうだ。
『あたし、迷惑なら出ていくから……』
肩を震わせ、俯いたままそう言った。