黄緑絵の具
話し終えると、アキラは興奮していた。
『周平すげーじゃんか!
あそこのじーさんって有名な画家だったんだぜ』
アキラの口から出た名前は“桑原志乃”。
僕が尊敬する画家の一人だった。
『じーさんの愛用品って何だろうな。
見てみようぜ』
老女に持たされたもうひとつの紙袋を開けてみる。
中には新聞紙で包まれた数種類の植物とメモ紙、そして年代を感じさせる大きな模造紙が折り畳まれて入っていた。
メモ紙には達筆な文字で“芸術の神を呼び出す法”と書かれている。
『なにこれ?』
メモ紙の裏には呼び出せる時間や方法が事細かに記載されている。
『周平、やってみろよ。面白そうじゃん』
アキラは大喜びだが、神を呼び出すなんて。
『呼んでどうするんだよ』
僕は僕の好きなように絵に没頭できる現状に不満はない。
『やるだけやってみろよ。
もしかしたらじーさんみたいになれるかもしんないじゃん』
尊敬する桑原氏と同じ事を行うという誘惑には勝てなかった。
――そして2日後。
僕はひっそりと実行することにした。