黄緑絵の具

なぜその話を避けるのかは分からないが、僕だって引き下がれない。

『スミレさん。はぐらかさないでください!

僕はスグリに会いたい。

彼女がどこにいるのか、教えてください!!』

なりふり構わずに、その場で土下座した。




『まさか土下座とはね。
スミレ、もういいじゃないか』


スミレさんとは違う声。

顔を上げると、スミレさんの横に青緑色に光る人が立っていた。


『もしかして、桑原さん……ですか?』


僕はおかしなことをしてしまったのだろうか。

二人はクスクスと笑った。



『志乃さんの若いときと同じだね。
これで私も思い残すことはないよ』


桑原氏とスミレさんが微笑み合うと、それが合図だったかのように二人は透けていく。


『えぇ!? ちょっ、なんで?
どうして…』


『最期に力を使ったからね』



桑原氏がふわりと微笑んだ。


< 74 / 103 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop