黄緑絵の具
『我は悪魔ベリアル。
たしかに呪文はフォルネウスを召還するものであった。
だがフォルネウスが多忙につき、我が代理で参ったのじゃ』
ベリアルと名乗った悪魔は溜め息をつく。
『本来ならば魂と引き換えに願いを叶えるところだが。
その術、絵描きからもらい受けたのであろう?』
僕は死ぬのか?
恐怖から言葉が出ない。
悪魔の問いに、頷くことしかできなかった。
『やはり。絵描きとフォルネウスの契約では報酬を受け取らぬ事になっておる。
奴ら、できておったからな』
『できて……ってフォルネウスさんは女だったの?』
『いや。奴は男じゃ。悪魔は性別にこだわらぬ。
純粋に美しい者を好む』
ベリアルはいやらしい笑みを浮かべた。
『我も男は嫌いではない。
お前のような綺麗な顔立ちは好みじゃ』
全身に寒気が走り、鳥肌が立った。
『僕はノーマルなんで遠慮しておきます』
ベリアルは本気でショックを受けたようだ。
美しい顔を俯かせ、座り込む。
そして少しの沈黙の後、口を開いた。
『美しい我を拒むとは……
お前は何を望む?』
僕は正直に答える。
『急に言われても。
ないとしか言えません……』