黄緑絵の具



僕が立ち上がると、ベリアルは書類の入ったクリアファイルを突き出した。


『スミレから頼まれていてな。
それと我からも。
夫婦になるなら必要だからな』


ファイルを開け、中身を出してみる。

そこには桑原屋の店と家の権利書。
それと戸籍謄本。


謄本には桑原さんとスミレさんの名前。

そして“桑原スグリ”

二人の娘として、スグリの名前が記載されていた。


『これは……』

『シュウの好きに使え。
ここを二人から譲り受けだのだろう?』


驚いた僕の顔を、楽しそうにのぞきこむ。

そして耳元で囁いた。


『我からの“祝い”じゃ。
好きなように使うがよい』


悪魔とは思えないくらい、綺麗に微笑む。


ベリアルの心遣いに泣きそうになった。

嬉しすぎて、さっきまでの怒りも忘れそうなほどに。



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