机の穴(仮)
あたしはその穴を覗きこんだけれど、シャー芯ケースの姿は見えない。


おかしい。


机の板は正味3センチ。そんなに浅いのだから、穴に落ちた物が見えないはずがない。

けれどその穴は真っ暗なだけで。


そうか、と思い直してあたしはまだ中身の入っていない机の中を手探りで探す。

……ない。

しまいには机の中を覗き込む。

……ない。


そもそも、真っ暗でどこまでも続いているかのようなその穴は、わずか3センチの机の板を突き抜けていないことに気付いた。


ケースは確かに音を立ててこの穴に落ちたのに。

消えたシャー芯ケース。

呆然とするあたしを尻目に、無機質なチャイム音が授業終了を告げた。
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