ネクロフィリア【加筆執筆中】
「私ね、知ってたんだ。
あの日、見てたから」

「…あの日?」

「飛び降りがあった日、いたでしょ?」

「あ」


藤井さんは知ってたんだ。
俺が飛び降りを目撃してたって事。

このマンションの住人なんだから、野次馬の中にいても全く可笑しくない。


「それで次の日さ、翔君と死体を見て気持ち悪いって言ってたのを聞いちゃって」


“気持ち悪くねえのかな”
“信じられねえよな”

そう、翔が言っていた言葉を思い出す。
藤井さんは隣の席だから、その会話が聞こえてしまったんだろう。


「だけど、ほら、私が死ぬ側で見ててくれるとか言ってくれたり…。
そんな話してたから、よくわかんなくなっちゃって。
なのに、どうしてもマンションのこと言いだせなくて」

「……そうだったんだ」

「だから、驚いたでしょ…?」

「うん、それなりに」

「……ごめん」

「……何のごめんだよ」

俯く藤井さんに、俺はいつも彼女が言う様に返して笑った。
少し顔を上げた藤井さんは、ゆっくりと口角を上げた。

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