ネクロフィリア【加筆執筆中】
「えっ」

「どーぞ」


それから俺は彼女の指に指輪をするすると嵌めた。

「わ、サイズぴったしじゃん」

「…………」

俺がおどけてそう言ったのも、彼女は聞いていないのか指輪を凝視している。
見事に薬指に嵌まったその指輪。

まあ、左手はクレープを持ってたから右手だけど。


「………って、え」

じっと手を顔の高さまで持ってきて見つめた藤井さんは…。
ぽろっと、涙を零した。


「え、な、何で」

あんな安い指輪買ってあげただけなのに。
別に特別な理由なんかない。

一週間近く、俺は楽しませてもらった。
それに、俺はやっと死体と対面出来る。

だから、その感謝の気持ちなのに。


「ご、め、……嬉しくて」

慌てて涙を拭うと、彼女は微笑む。


「そんな喜んでくれたなら何より」

俺がそう言うと、彼女は目をまん丸くした。
それからくくくっと顔を手で覆いながら笑いだした。


「何それ、キザ過ぎ」

「はあ?んなことねーし」

「そうだよー」

「ちげーし」


何が違うのーとか言いながら、藤井さんは嬉しそうに笑う。
それから、また指輪を見てふふっと笑った。

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