儚き願い





家に入って
「蓮華ただい・・・」
そこまで言って
僕は自分の口を両手で覆った。






蓮華は泣き疲れてしまったらしい。
ぐっすりと眠っていた。





僕が初めてこの家に来たときは
蓮華のお母さんがまだ、生きていた。





しかし、今は・・・もういない。





「・・・くろ。ざくろ。」
蓮華声に驚いた。
起こしてしまったか?





いいや違った。
今のは蓮華の寝言だった。
僕はほっと胸をなで下ろした。





「ごめんね。」
僕は寝ている蓮華に小さく言った。
そのすぐ後、僕は蓮華の目に
光が溢れていることに気付いた。





それは出会ったあの日から
全く変わることのない
とても綺麗な涙・・・










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