儚き願い




森から出ようと
蓮華を抱えて走っている僕らの目の前に
見覚えのある獣が姿を現した。





「守・・・楠・・・??」
僕たちは足を止めた。





「こんにちは。柘榴。
人間の女なぞを抱えて、
一体どうするつもりですか?」
守楠の表情は笑っていた。





そんな守楠を見て僕の身体全体に
悪寒が走った。





「どうしました??
固まってしまって。
何かありましたか??」
守楠は僕が固まっているのを見て
笑いながらそう言った。





でも、僕は知っていた。
なぜ守楠の表情がこんな風になってしまっていたのかも・・・





僕は・・・
僕達は
過去の呪縛から
決して逃れることなど出来ない
生き続ける限り
永遠に・・・





「柘榴。こいつ誰だ?」
牙炎は固まっている僕に言った。





「守楠。」
僕は牙炎に向かって言った。





「敵か?見方か?
それだけ名乗れ!」
牙炎は守楠に言った。





「いやだなぁ。
争いしに来た訳じゃないよ。」
守楠は言った。





「じゃあそこをどけ!」
牙炎は守楠に言い放った。





「気が短いな~
しょうがない、柘榴。
私も連れて行ってくれ。」
守楠の申し出に僕は驚いた。





「過去に一度。
お前に救われた命だから・・・な
今度は私がお前の力になろう。」
守楠は表情を笑わせたまま
静かにそう言った。















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