儚き願い





今回もまた僕は帰ってきてしまった。
理由はもちろん、





禁忌の言葉を使ったから。





元々、禁忌の言葉は我ら

獣の先祖が人間との

力の差を示すものだった





しかし、人間になりたいと望む獣を

人間に近付けないようにするために

禁忌の言葉は生まれて来た。





禁忌の言葉を発すると、

主が獣、つまり僕たちとの契約を

解消するまで自分で自我を

制御出来なくなってしまうのだ。





人間は獣を恐れる大きな理由

それは獣が人間よりも

大きな力を持ちすぎて居るからである。





しかし、2年に一度だけ
僕たちが新しい主人を捜しに行くことを
許される



宝の日というのがある。





今年はその宝の日がそろそろ来る時期だった。





「丁度良い頃に戻って来れたな。」
何かを考え続けている僕に
朱雀さんはにこやかに笑って言った。





「僕。今回宝の日外界に行くの
止めようかなって考えてたんです」
僕は朱雀さんに言った。





「柘榴・・・外界で何があったのかは知らないが、
そこまで責任を感じる必要はないのだぞ?」
朱雀さんは僕を宥めるように言った。





そして、それだけ言うと朱雀さんは
賑やかな部屋へと入っていったのだった。





.
< 6 / 100 >

この作品をシェア

pagetop