儚き願い




「ごめん。
泣き声がしたから・・・
ちょっと気になって・・・」
そう言って僕は謝った。





「柘榴さん・・・
なんだか不思議・・・
柘榴さんを見てると
とても懐かしい感じがするの・・・
でも私は何も思い出せないの・・・
思い出そうとすると
苦しくて・・・」
そう言って蓮華は俯いてしまった。





僕は蓮華の涙を拭って、
そっと抱き寄せた。





懐かしい・・・
蓮華の匂い・・・





僕は蓮華を抱き寄せたまま静かに言った。
「僕が絶対に記憶を取り戻してあげるから。

だから、泣かないで。

僕には涙することは出来ないけど。

君には笑っていて欲しい。」
と。





その言葉を言うと、
君はもっと泣き出してしまった。





僕にはどうしたらいいかわからなかった。





だって僕は
自分の意志で泣いたことがなかったから・・・





でも、僕はただずっと蓮華を抱きしめていた。









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