儚き願い


前回も前々回も僕は言ってはいけない


あの禁忌の言葉を言ってしまう。





主人は僕が自我を忘れているとき

とてもひどいことを言う。





『獣のくせに』
とか
『化け物め!!』
とか





自我を失っている時には


耳に届いては来ない言葉だけど、


ここ、生命の樹に帰ってきて


自我を取り戻すと


耳の奥で何度も何度も


繰り返し繰り返し


まるで呪文の様に


繰り返されるんだ。






僕は長寿じゃなくても良かった。

どんなに弱くても良かった。

ただ、いつもいつも

“人間になりたい”

とずっと思っていた。





『そこまで責任を感じる必要はないのだぞ?』
朱雀さんの言葉が甦る。





「今年の宝の日・・・出てみようかな。
良い主人見つかるかな??」
僕は小さく言った。





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