時の中で







入学式が終わって
その日の夜は紗菜と
ファミレスに来ていた

お祝いだからって紗菜のおごり
今日はやたらと気前がいい


紗菜とか小学生から
ずっと仲良しでなんでも話せるし
紗菜にはなんでも見透かされる
一緒にいて気を使わなくていいし
なにより楽しい


お腹いっぱい食べて
満足したあたし達は帰ることにした

ファミレスはあたしの家と
紗菜の家も間にあるから
ファミレスで紗菜とばいばいして
苦しいお腹をかかえて
重い足取りで歩いていた



─────チャラララランチャララララン♪♪


 “  着信 蓮紅 ”


ディスプレイには蓮紅からの
着信を写す文字

肩がぶつかったこと怒ってるのかな?
と少し不安になりながらも
あたしは通話ボタンを押した


『もしもし?』

「琉希って俺と同じ学校だったんだな
 今日見たぜ?気づかなかっただろ」

『そうみたいだね
 聖太から聞いたよ!』

「俺とクラス違うよなー
 ってかさ!校長馬鹿うけた!」



たわいない会話をして電話は終わった
───通話時間 35分

意外とたくさん話したかな


携帯をポケットにしまって
再び静かな道を歩き出した


あたしはこのとき自分の足取りが
軽くなっていることに気づかなかった




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