【完結】ヒミツの極秘結婚【社長×秘書】
side美優紀
会長は突然、わたしたちに向かってそう言ってきた。
「……ですが、俺は今、まだ子供を作りたいと思いません。まだ結婚して間もないですし、まだ早いと思います。……それに、仕事もありますし」
わたしは社長のその言葉を聞いて、ショックを受けた。
「……美優紀さんは、どうかね??」
と、問いかけられて、わたしは……。
「そうだ。前に君には言ったと思うが……」
確かに言われた。あの時、確かに……。
「いずれ子供を作ることは、俺たちも考えています。ですがこれは、俺たち夫婦の問題です。……お願いですから、口を挟まないでいただけますか??」
そう会長に訴えかけた社長の声は、少し怒っているかのようだった。
子供の話をした途端に、少し表情が変わった。
ーーーその時思った。やっぱり社長は、わたしとの間に子供は欲しくないのだと、イヤでも感じてしまった。
「すまない。少し踏みこみすぎってしまったようだね。……わたしは帰るよ」
会長は立ち上がり、ドアの方へ向かった。
「では会長、下までお送りします」
「いや、大丈夫だよ。仕事に戻りなさい。呼び止めてしまって済まないね」
「……あ、いえ。お気にならず」
会長はそのまま、にこやかに笑い、エレベーターまで行ってしまった。
「……美優紀、済まない」
「なにがですか??」
「会長のことだよ。美優紀の気持ちを知らずにあんなこと……」
「……いえ、気にしないでください」
わたしは社長の顔を見ることができなかった。
……どんな顔をすればいいのか、分からなかった。
夫婦の間に子供がほしいと思っていたのは、わたしだけだったんだ……。
そう思うと、悲しくなった。