組対のデカ
「そのえこひいきに追い討ちをかけるようにして、七年前の二〇〇五年に発生した、新宿区内のホテル一室における殺しのヤマで速水が捜査に失敗した。これも警視庁職員なら皆知ってる事件だ。警視庁指定31×号事件ってやつだよ」


「本庁のデータベースにて確認済みです」


「それで速水と越沼は捜査において完全に別行動を取るようになった。俺もさすがに当時の長谷川さんが何を思って速水をあそこまで追いやったのか分からない。ただ、速水の方が何かと勘で動くデカなのは知ってる。越沼が刑事として調べ尽くしてから動くタイプであるのとは対照的に、速水は思いつきで動く女刑事だ。それが両極端になって、意見が合わないんだ。おそらく本人たちも気に掛けてると思う。班は違うにしても、互いに一課で同じ帳場に詰めてるからな。互いにそりの合わないデカほどどうしようもないのはないからね」


「じゃあ丸岡さんは公安で三課長をしながらでも、事態の推移を見守っていると?」


「ああ。今の仕事は閑職だからな。別にお前らみたいに大規模な銃やシャブの取引を取り締まるようなデカじゃないし、公安は裏部隊だ。何か右翼が過激なことでもしてこない限り、俺たち公安第三課の出動することはないってわけだ」


「でも、それは凄く苦痛じゃありませんか?刑事は追うものがないと、何もないんですし」


「安藤、デカには表と裏があるんだ。本庁でも一課や二課、それに組対四課みたいな部署が動くのは報じられるが、公安警察が動く事件なんて報道されないだろ?」
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