組対のデカ
第30章
     30 
 長谷川転落死事件で西新宿署の帳場に詰めていた北山院が、警視庁から連れてきた部下の刑事たちを編成して特別捜査部隊を作り、速水や越沼たちと別行動を取り始めたのは七月の半ば過ぎだった。


「もう待ってはいられない」


 管理官席に座ったまま、歯噛みする。


 俺たち組対も北山院がこれ以上待ちきれないことを知り、正直なところ、デカらしくないと思えた。


 少なくとも一課の刑事たちが動き続けている以上、それを待つのが普通だろう。


 俺にも北山院のその行動がげし兼ねるのだった。


 だが所轄に設置された帳場ではおそらくデカたちの行動がバラバラなのだろう。


 俺にもそういったことは容易に推測が付いた。


 事態の推移を見守るつもりでいる。


 焦らずに。


 北山院の行動がいささか早急に過ぎるということも感じられたのだし……。
< 175 / 259 >

この作品をシェア

pagetop