組対のデカ
 速水が抜け駆けして大口に会いに行くほど、大口が今回の事件の裏を知っているということは容易に推察できた。


 そして事件は着実に迷走している。
 

 河村組組長の鐘ヶ江勇次郎と愛人の篠原優子、そして鐘ヶ江の下にいる酒身史雄が裏で動いていることを。


 特に篠原は長谷川転落死事件に関与している可能性が大だった。


 ビル屋上に置かれていたワープロ打ちの遺書には大塚会の北川の指紋と篠原のそれが検出されている。


 証拠となるDNAが存在している以上、ウソをつくことはできない。


 組対でも四課の方のデカたちは、すでに動き始めている。


 俺も組対部にいるのだが、仕事は五課長の倉田の指令通りやっていくつもりだ。


 ずっと絶えることなく警官として歩いてきている。


 こんな事件に半ば命懸けで挑まなくてはならないと分かっていても。


 だが刑事はきつい仕事だと再認識できた。
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