組対のデカ
 おそらく長谷川の転落死で管轄である西新宿署に帳場が立つのを知っていたのだろう。


 そしてその捜査本部に警視の北山院が管理官として着任することも。


 俺たち組対の人間でも十分分かる。


 事の前後関係が。


 速水と越沼の捜査は間違ってなかった。


 少なくとも正攻法で捜査していたのは事実である。


 汗を掻き、靴底を磨り減らしてという刑事にとって一番原初的な手法で、だ。


 俺も普段ずっと蟠っていたことがあった。


 なぜ長谷川が死ななくてはならなかったのかということだ。


 退職し、年金で暮らしていたにしても、金に困ったりすることがない人間が飛び降り自殺することなど、およそ考えにくいからである。


 付けた調書を倉田のパソコンにメールで送ってから、ふっと立ち上がり、窓際のブラインド越しに外の景色を見た。


 桜田門は夕暮れ時だが、今日も慌しい。
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