組対のデカ
「どなたでしょうか?」


「喜多原(きたはら)検事が捜索を執り行なうそうだ。俺もそれを聞いて安心してる。喜多原検事も大口検事と同じぐらい捜査には腕力があるし、定評もあるからな」


「そうですか……」


 曖昧に頷いてみせる。


 俺も正直なところ、今回の捜査が頓挫するかもしれないと思っていた。


 だがそれを十分補えるだけの検事がいて、ちゃんと捜査を行なえる以上、気にすることはないだろう。


 後は柳たち不正に関わった民自党の国会議員数名が引っ張られるだけだ。


 国会閉会後、すぐに司直が動き出す。


 もちろん身辺の内偵捜査も万全だった。


 俺も大口が在宅起訴されて、捜査が行詰まってしまうのは防げたので、代わりに喜多原が捜索を担当することでよかったのである。


 特捜は恐ろしい組織だ。
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