組対のデカ
第10章
     10
 数日が経ち、ゴールデンウイークも終わりに近付いた頃、町岡たち河村組関係者と、三嶋興業の三名は釈放された。


 容疑を決定付ける証拠等が出てこなかったからである。


 証拠不十分なまま、検察に送致したとしても、裁判では勝てない。


 それにいくら薬物や銃器所持の現行犯で逮捕されたとはいえ、犯罪者たちが自供しなかった以上、それから先のシナリオは描けなかった。


 俺たち組対も散々取調べを行なったのだが、町岡たち関係者は結局口を割らずじまいだった。


 西新宿署の帳場に詰めている北山院たち警視庁捜査一課から派遣されてきた刑事たちは捜査会議を取り仕切り、速水班と越沼班の捜査員たちも出席する。


 特に速水班の方は早々と長谷川勇平が転落死した事故は自殺ではなく他殺だとして、捜査を進めていた。


 越沼は先を越された感じで、舌打ちしていた。


「速水の野郎、先に手を付けやがって」


 歯噛みするのだが、致し方ない。

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