組対のデカ
第13章
     13
 五月も中頃になって、五月病の症状も抜け、季節は夏になり掛けている。


 俺たち組対の刑事は相変わらずだった。


 一課の速水班と越沼班のデカたちが長谷川転落死事件で動いているのは、部署を超えて知っている。


 警察にとって表の顔である警視庁刑事部は総力を挙げ、河村組や大塚会などの暴力団摘発に乗り出す手筈でいた。


 特に河村組組長の鐘ヶ江勇次郎とナンバーツーの酒見史雄は危ない。


 組対四課の刑事たちが必ず捕まえるはずだ。


 今、下手に組事務所を捜索するとまずいと思っていたようだし……。


 ビル屋上から転落した長谷川の残したワープロ打ちの遺書から、大塚会構成員の北川嘉美の指紋が検出されている。


 鑑識が鑑定と照合を済ませた結果、右手親指と人差し指の指紋が残っていて、北川のものと断定されていた。


 河村組と大塚会は系列の組で互いに何かと仲がいい。
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