組対のデカ
「簡単だよ。越沼の出世が遅れるだけだ。あと騒ぎ立てるのはブン屋や雑誌屋だろうな。アイツらにとってこれだけ書きがいのあるネタはないからね。捲くし立てるだろうな」


「そうですか……」


 俺も初めて聞く話だった。


 確かに速水が先に事件を解決すれば、越沼のメンツはなくなる。


 それにバッシングを受けるのは、越沼の方だと思われた。


 警官にとって、事件を逃がすということがどれだけ重たいか……。


 そういったことはすでに分かっている。


 俺たち組対部のデカは刑事部の人間たちと話をすることはないのだが、さすがに気の毒なのは入庁以来、男性警官たちから軽視されてきた速水の方だ。


 その速水が今、捜査の最前線にいて、俺たち組対よりも派手に動いている。


 遺書まで残した長谷川の死は自殺と断定するのが極普通だ。


 だが他殺の線も消えてない。


 マル暴だった人間が、何者かによって消されることもある。
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