夢浮橋
桜並木の先、一輝の後ろ姿を少しだけ見送る。
じわじわと染みてくるような懐かしい気持ちも胸の痛みも、一輝の後ろ姿が遠ざかるうちに消えていく。
いつもそうだ。
一輝の傍にいる時だけこんな気持ちになる。
…好きなわけじゃない、絶対。
好きじゃないはずなのに…………なんでこんなに……別れた後は寂しく感じてしまうんだろう。
私も前から知ってるような気がして仕方ないよ……。
そう言葉にしたかった。
ただ、言葉にしてしまったらいけない気がして、黙って一輝の話を聞いていることしか出来なかった。