夢浮橋
「綺麗な月……」
霧のような雲が流れて、夜空に明るい月が輝いた。
一面の緑の中に横たわるゆかりの姿を月明かりが照らした。
「月って明るいんだ……」
眩しいほどに輝く月に手をかざす。
ふと手をあげてみて違和感に気が付いた。
袖口は重力に逆らうことなく緩やかに下がり、上腕あたりで留まっている。
月明かりに浮かぶ自分の白い腕が見えた。
半身を起こして着ているものを確認する。
「何…これ……」
ゆかりは、桜色の浴衣のようなものを着ていた。
周りを見ればいつもの夢の中。
湖のほとり、一面の緑の中にゆかりは横たわり月を見ていたのだ。