夢浮橋










「綺麗な月……」



霧のような雲が流れて、夜空に明るい月が輝いた。

一面の緑の中に横たわるゆかりの姿を月明かりが照らした。



「月って明るいんだ……」



眩しいほどに輝く月に手をかざす。

ふと手をあげてみて違和感に気が付いた。

袖口は重力に逆らうことなく緩やかに下がり、上腕あたりで留まっている。

月明かりに浮かぶ自分の白い腕が見えた。


半身を起こして着ているものを確認する。



「何…これ……」



ゆかりは、桜色の浴衣のようなものを着ていた。

周りを見ればいつもの夢の中。

湖のほとり、一面の緑の中にゆかりは横たわり月を見ていたのだ。


< 27 / 43 >

この作品をシェア

pagetop