夢浮橋
俯き加減で話していた蓮が顔を上げた。
その紺碧の瞳がゆかりを映した。
「時の国は、死の間際に強い願いを残した者だけが来る場所だ。その願いは後世に引き継がれ、後世で成就する。藤壺の願いは後世で、お前に、………ゆかりに引き継がれたんだ」
「………私に?」
「そう、お前は今、夢を媒介してこの国に来ている。本来ここに来れるのは、願う者一人と番人一人。それ以外にここに来れる可能性のある奴は、後世で生まれ変わった奴だけなんだよ」
「……うそ、でしょ?………だって御伽話や伝説じゃあるまいし、生まれ変わりだなんて。……いくら似てるからって、ありえないよ。これ夢だし……」
「誰も、すぐには信じられません……。私もここに来た時は、信じられませんでしたから………」
優しい笑みを戻した藤壺が遠慮がちに口を開いた。