truth
幼い頃、
澄んだ瞳をした女の人が道端に咲く花を
「綺麗ね…」
と呟いて見つめていたのを見た。
その花は車がはねた泥が花弁に付き汚れていた。
幼い俺には汚れた花の美しさは全く解らなかった…
花と向き合っていた女性は、しばらくすると俺の方を向いた。
と言うよりは偶然視線の先に俺がいた。
その人は目を見開いて驚いたが、すぐ笑顔を浮かべた。
「僕?
このお花はね人を愛してくれているのよ…
自分を汚した人間さえ…
美しい花を咲かして人の心を明るくしてくれているの。」
幼い俺には難しい言葉を並べながら頭を優しく撫でてくれた。
ふと鼻に甘い香りを感じた。
今思えばフローラル系の香水だったのだろう。
その時は、ただ香りに誘われるように笑顔を浮かべていた。
いつしか俺は彼女と女性を重ねて見ていた…