僕らのお気に入り❤


毎回思うのだが、この人のすること行動なすことが不思議すぎて分からない。

理解不能だ。


血の繋がった親子なのに。


母親はあたしが8歳の時にすでに他界しており、以来炊事家事全般はあたしがしている。


一応、父の職業は薬剤医学学者ということになっているらしい。

が、


実際の所は分かんない。


頭は相当良くて、


16歳という史上最年少でノーベル物理学と生理学・医学賞を受賞したという世界的更新記録を出しているくらいの天才学者だ。


そして、7年前、新たにノーベル化学賞を受賞した。


どこまででも、この人は稀有な存在。



「あ、紫君、何しに行ったんだ? って思ってるでしょー?」

勝手に他人の心を読まないでほしい。


「心を読んでごめんね☆でも、僕だから♪ってへ☆」


ってへ☆ってキモっ!

しかも、☆とか♪とかつけてさらに倍に気色悪い。

我が親ながら、赤の他人のふりをしておきたくなるくらいキモさだ。


しかも、ってへって何歳なの? と思わず疑問を問いたくなる。


「たしか、早苗ちゃんと18でデキちゃった婚しちゃったから、今年で33だね!」

また勝手に…

人の心を読まないで。


あたしは、今初めて知った事実に驚愕してしまった。

父さんがデキ婚だったなんて…。

16年後の真実ってやつなのか?

ちなみに早苗ちゃんとはあたしの母親のことである。


「天才だから☆」

わけのわからんことをいきなり何なのよ!!

天才って何気にムカツクんだけど……。


だが、あたしは子供じゃないので顔には出さず、

怒りを抑えた。

そして、父さんのムカツク顔を見ると何だが呆れ、ため息をつく。


見た目が若く、精神年齢も非常に幼い父親…。

これで33歳とか…詐欺だわ。


見た目、どう見ったて16歳前後。

以前、一昨年よりも若返っているのでは? と疑うくらい年々若返ってる気がするのだが、もはや、父さんはこういう生態なので気にするまい。


あたしと同じ年くらいに見える容貌は(父と呼ぶのですら口惜しいので)奴を褒めるような言葉は癪だが

はっきり言って美少年。


天然のふわふわと少しウェーブかかったキャラメルブラウンの髪に

ちょうどいい厚さの薄い形のいい唇。

ニキビもなく張りがあり、きめ細かい肌。

きりっとした大きな二重の翡翠瞳。



どこからどう見ても、美少年だ。

街中を歩けば誰もが振り向き、(吐きそうだけどキモいけど認めざるを得ないので)逆ナンされること間違いなし。



写真でしか見たことがなく、幼い頃の記憶が曖昧なせいもあって、

母に関する記憶が殆どない。

だけど、写真の母は誰が見ても一目で分かるくらいとても美しい容貌だ。

黒真珠みたいで綺麗で流麗な黒髪と、くりっとした大きな藍色の瞳が特徴的な女性だ。

清楚で柔和な気質がその容姿や立ち姿から写真でも分かるくらい匂い立ち、その楚々整った顔立ちはまるで聖画に描かれた女神のように優美だった。


一見、儚げそうな印象を見る者に与えながらも、同時にどこかに通う芯の強さを感じさせる――そんな強い眼する女性だ。

これが写真に写っている母に対するあたしの印象だ。


それに比べて、あたしは…はっきりしなく冴えない平凡過ぎる容姿だ。



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