僕らのお気に入り❤


あたしは再びキッチンへと戻り、作りかけの料理を作り始めた。


幼いころに母を亡くしたせいか、

家事・掃除を始めとし、炊事は人並にできる。


父さんは家事炊事が全くできない。

簡単に作れる目玉焼きすら、父に作らせれば爆発が起き、どうやったらそうなるんだと問い質したいくらい得体の知れないものになる。味の方は言わずもがな。

口から泡を吹く。地獄を見ます。


皿洗いをすれば、全部皿を割り、洗濯をすれば、泡だらけになり、なぜか衣服が破れている始末。どうすればそうなるのやら……という感じで、家事炊事に関しては全壊全滅。

つまり、不器用すぎるということだ。

あたしの中ではその時、父は天才すぎるがゆえに変人だということが証明された。



「よいっしょっと」

半生状態のままの卵をオムレツの形にし、フライパンを持ち上げフライパン返しをし


ケッチャップごはんの上に乗せた。


あらかじめ作っておいた特製のソースをかけ盛り付ければ―――


「できたっ」


鼻歌を歌いながら、ダイニングテーブルまで二人分の夕飯を持っていった。




すでにテーブルに着席している父親。


目の前に今日の夕飯を並べた。


「うわぁ~美味しそうだね」


美味しそうじゃなくて美味しいのよ!

味見したからかなり自信がある。



だから、きっと美味しいはずだ!


「どうぞ、召し上がれ」

「うん、いただきます」

スプーンでオムライスを掬った父さんは


ぱくりっと


一口食べた。


どうだ?

美味しいか?

と最初に言った言葉と矛盾するあたしは内心ドキドキと緊張した。


真顔で父さんの表情を見つめる僕。


なんて言うのだろう。

ごくりと唾を飲み込み咽喉を鳴らす。

「お…」

お?






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