時計の針は戻らない。


「今日もかわいーねー!」

「村沢先輩に言われても嬉しくありませんー」
すばるに向かってべーっと舌を出す小春。

「そーだよなー、小春ちゃんは宗佑一筋だもんな~」

「当たり前ですっ!」

大野 小春(オオノ コハル)

定義づけるならば、俺の恋人である。
なぜ、定義づけるなら、という言い方を敢えてしたのか。
それは、俺があまり小春のことを知らないからである。

4月、入学したての小春に惚れられて、猛烈なアタックにひれ伏し、付き合い始めたのはたしか6月の終わりだった。と、思う。

しょうがなく付き合ってるみたいな言い方だけれども、
実際、小春はめちゃくちゃ可愛い。

その小春がなぜ俺なんかを選んだのか疑問であるし、
その疑問が、小春との微妙な一線を引く原因になっているのは恐らく間違いないのだ。

小春がそれに気づいているかはまったく検討もつかないのだけれど。

「宗佑、一緒に帰ろ?」

「うん、そやな。あ、その前にちょっとついてきて?
ほら、すばる、行くぞ?ジュースおごってくれるんやろ?もちろん小春のも」

すばるは一瞬、「しまった」みたいな顔をした。

してやったり♪




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