その女、最強総長【完】
アイ
午後、12時。
世間はもう大人も子供も寝ているであろう時間帯。
真っ暗闇の中、宿泊しているホテルから少し離れた病院へと足を急がせる。
勿論、他の奴等には言っていない。
正門からはやはり忍び込むことは不可能で、回り込むと偶然にも開きっぱなしのドアがあった。
そろそろと足音を立て無い様、慎重に一歩ずつ足を進める。
「仁兄ちゃん…」
掠れ声で俺を呼ぶのは咲也、こちらに向かって手招きをしている。
咲也の居る場所に無事辿り着くと、今日行った凛の部屋まで案内された。
凛の病室の前に着くと、もう咲也の姿はいつの間にか消えていた。
「仁…」
不思議に思っている暇もなく、突然俺の名前を呼ぶ声が聞こえる。
…?
「仁…仁…」
また、だ。
よく、耳を澄まさなくてもわかる。
凛の病室から聞こえる俺の名前を呼ぶ声。
それはよく知る、凛の暖かい声。
昼の時とは違って暖かくて…暖かくて…包み込まれる様な…