その女、最強総長【完】



「咲也、先にお母さんに抱き着いた方の勝ちな?」


「うんっ!!」



「よーい……」



身の危険を感じて少し構える。


人で遊ぶのは辞めてほしい。



「ど…ッ咲也!」


「へへ。」



咲也くんは仁のドンッを無視して、見事に私の腕の中にゴールインした。



「お母さんあったかーい。」


「この糞餓鬼咲也、離れろ。」



かなり大人気ない仁、きっと心の中では家族ごっこをしたことに後悔しているのだろう。



「うぇー…ん!お父さんが苛める~。」


「よしよし、お父さんにはもう近付かない方が良いよ。」


「そうだね~!」



普段良い子ちゃんの咲也くんが今日ばかりは、小悪魔に見えた。



「お母さん、咲也が苛める。」



どさくさに紛れ、私に思い切り抱きつく仁。


咲也くんが潰れちゃう。



「仁、退いて。」



そう言った時の仁の表情は…



「あはっ、あはははっ!」



私のつぼだった。


その日は柄にも無く、大爆笑し続けた私だった。


でも仁、私少しだけ"家族"の意味がわかったよ。



私を真ん中に、抱き枕の様に寝てしまった、咲也と仁を見て


"おやすみなさい"


と呟いた。


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