どうして好きなんだろう

「ママ!合格したっ!受かったよ!」

電話の向こうからはママの狂喜乱舞する奇声が聞こえてくる。

あまりの興奮にもはや日本語は話せていない。

「理央、よく頑張ったな。ママが理央の好物用意して待ってるぞ。」

今度はママの泣き声が遠くから聞こえる中、パパの穏やかな声に通話が変わる。

「うん。ママお願いね。」

クスクス笑いながら終話ボタンを押す。この状態のママを正常に戻すことができるのはパパだけだからね。


T大合格発表の今日。

どうしても一緒に行きたいと玄関で縋るママを、もし落ちてたら一人で少し時間が欲しいからとかなんとか言って一人で出てきた。

この状態のママをここでさらし者にするには勇気がいる。


< 162 / 215 >

この作品をシェア

pagetop