どうして好きなんだろう

「ありがとうざいます。返却はら…」
「おいおい、ねーちゃん。今笑っただろ?俺のことバカにしたように笑っただろっ?」

決まり文句の返却日案内を言い終わらないうちに目の前のおじさんが唾を吐き散らしながら私を指差す。

え、…笑ってなんか…ない。

早く行ってほしかったから無表情にやってただけ。

でも、目の前の男のあまりの剣幕に怖くて言葉がでない。

「バカにしてんじゃねえぞっ。」

ダンッとカウンターを叩く音に、店長が慌てて出てくる。

「お客様、何かありましたでしょうか。」

「何かあったじゃねえぞ。このねーちゃんがな、オレのことバカにしやがったんだよ。」

「そんな…それは申し訳ありませんでした。」

心配そうにチラッと私を見て、興奮冷めやらぬおじさんに頭を下げる店長。


そんなこと…しなくていい。

店長が頭を下げることない…。

私は、笑ったりなんか…してない。
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