どうして好きなんだろう

「そいつ、笑ってなんかないよ。…おっさん、早くどけろよ。」

意志の強そうな、凛とした声が響く。

それはとても抑揚がなくて、誰に向かって放った言葉なのか混乱している私にはすぐにはわからなかった。

顔を上げると、目の前のおじさんよりも遥かに上に切れ長の奥二重が威圧するようにおじさんを睨みつけている。

「なっ、なんだとぉ。貴様に関係ないだろう。」

明らかに自分よりがたいの良い彼に気迫負けしているおじさん。

カウンターに置いたままの握り拳がプルプル震えている。


「レジ、詰まってるんだけど。…俺、見てたから。あんたがいちゃもんつけるの。」

無表情で言い放つ彼に、冷静さを欠いていくようにみえるおじさん。

「なんだとぉ。どこから見てたっていうんだ、言ってみろ!」

手も足もバタバタさせながら顔を真っ赤にしながら食らいついている。

でも、目の前の彼はいたって冷静で。
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