どうして好きなんだろう

「あんたの後ろから。…てか、もうやめたら?恥ずかしくない?」

そういって促すようにくいっと顎で後ろを示す。

彼の背後には興味津々で見つめるカップルや不信感をあらわにする家族連れのレンタル待ちの列。

その行列の視線に、さすがに冷静さを取り戻したようなおじさんは

「ふんっ。こんな店二度とくるかっ。」

捨て台詞を吐いてそそくさと出て行ってしまった。

あまりに呆気ない幕引きに、おじさんの後姿を見送ることしかできなくて。

「長谷川くん!いやぁ~助かったよ。ごめんねぇ。待たせてねぇ。」

彼にお礼を言いながら貸し出しをする店長の声に漸く視線を移す。

180cmは軽く超えてしまうような長身に、日に焼けた端整な顔立ち。

短く揃えられた髪も彼の精悍な顔立ちをより引き立てているようで。

いわゆる…男前。

うん、イケメンっていうよりは、もっと男っぽい、男前って言葉がよく似合う。
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