どうして好きなんだろう
「それ、おもしろいよ。」
仕事も忘れてDVDとにらめっこする私の頭の上から降ってくる声。
瞬時にバイト中だったと思い出して手に持ったDVDを慌てて棚に戻し、声の主を仰ぎ見る。
そこには今しがた私が戻したDVDをまた手にしている無愛想王子(勝手に命名)。
もう帰ったかと思っていた人の声にしばし動きが止まってしまうけど、そんなことは全く気にもとめていないように次々に違うDVDを手に取り、裏面をチェックしている。
固まったままの私の頭のすぶ上にあるDVDに手を伸ばす彼に、思わず横に1歩除けると、目に入るのは私のお気に入りのDVDで、咄嗟に声を出す。
「あ、それ!…おもしろい…です。」
上から見下ろす彼の射るような視線にだんだんと消え入りそうになる声。
返ってこないであろう反応を思い、本来の仕事に戻り棚を拭くため背を向けると。
全くもって予想もしてなかった反応。